吹き替えに大苦戦
仕事に着手した増田が真っ先に掲げたテーマは「過去から未来への接続」だった。「例えば、私の『くるみ割り人形』を鑑賞してくれた子供たちが、大人になってから『自分もあんな映画作ってみたいな』という気持ちになってもらいたいのです。僕はアートディレクターだから、ビジュアル作りには絶対の自信があります。だから作品の持つメッセージ性をどう伝えるかにより力を注ぎました」
同席した有村は今年、すでにスタジオジブリのアニメーション映画「思い出のマーニー」(米林宏昌監督)で声優を経験していたが、今回の吹き替えには大苦戦したそうだ。「Kawaii」を標榜(ひょうぼう)する増田監督からは「クララの幼くて、甘えた感じを前面に押し出してほしい」と要求されたものの、等身大の自分をぶつけようと臨んだ有村は「私とはまったく反対のタイプなのでペースがつかめませんでした」と苦笑い。数時間に及ぶ監督とのイメージのすり合わせを経て、有村は監督の求めるクララ像を何とか表現することができた。「少女から大人の女性へと成長していくクララに、今の自分の姿を重ねて吹き替えに臨んでみたんです。監督の提案ですが、不思議とうまくいったんですよ」。11月29日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮川浩和/SANKEI EXPRESS)