11月28日、「スカラ座」の記者会見場に姿を現したダニエル・バレンボイム氏。音楽監督からの退任を発表するとともに、中東和平に向けて音楽が持つ可能性を熱っぽく説いた=2014年、イタリア・ミラノ(AP)【拡大】
AP通信などによると、バレンボイム氏は28日の会見で、「任期途中で去ることは寂しい。しかし、私には全力を傾けて成し遂げなければならないことがある」と語り、その上で「音楽学校が人間関係を築くことに寄与でき、そのことがいつの日か、中東紛争を止めることにつながる。私は確信している」と訴えた。
さらに、「私にできることは人々の触れ合いを創出すること。(中東和平は)政治ではうまくいかない。なぜなら政治こそは人間の衝突そのものだからだ」と力説した。スカラ座の音楽監督は30日付で退くが、12月7日に開幕するベートーベンの歌劇「フィデリオ」ではタクトを振るい、これがスカラ座での最後の活動になるという。
ベルリンに16年開校
バレンボイム氏が創設に並々ならぬ情熱を注いでいる音楽学校は「バレンボイム・サイード・アカデミー」と名付けられ、命名は自身の名前と、共にウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団をつくったパレスチナ系米国人の文学者、エドワード・サイード氏(1935~2003年)の名にちなむ。ベルリン国立歌劇場の裏手にある収蔵庫を改造して建てられ、リハーサル室、事務所、カフェ、622席のホールなどから成り、楕円の形をした上下二層の客席が中央の舞台を囲むユニークなホールは、バレンボイム氏と親交があるカナダ出身の著名建築家、フランク・ゲーリー氏(85)が設計した。