もしかすると彼は、ジャンルで音楽を聴くという閉塞性からリスナーを解放しようとしているのかもしれない。とはいえ、ジャイルスが考えるジャズという軸は一貫しており、楽器やリズム、歌唱法といったより明白なジャズの印が随所にちりばめられ異なる音楽性をつなぎ止めているとも言える。
『ブラウンズウッド・バブラーズ・11』は、単に彼が最近のお気に入りをセレクトしたのではなく、ある意味年間ベスト的な意味合いを持つだけに資料価値も高い。ジャズから他の音楽へ、あるいはその逆へ、自分のテリトリーを広げてみたい人には絶好の一枚だ。旧譜を知り尽くしたジャイルスが新譜の中から未来の古典になるであろう普遍性の高い楽曲をコンパイル(編集)しているとしたら、これは予言であると言うこともできるに違いない。(クリエイティブ・ディレクター、DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)