□映画「毛皮のヴィーナス」
「SM映画」である。「私ってS? M?」と何度も自問自答させる作品である。S=サディズムとM=マゾヒズムについて、これほどまでに艶(なまめ)かしくもエレガントに提起してくれる作品があっただろうか。知性と気品と悪戯(いたずら)心に満ちた、ウイット溢(あふ)れる軽やかな大人の作品の登場である。
「戦場のピアニスト」(2002年)で世界を席巻するなどヒット作を連打するポーランドのロマン・ポランスキー監督、81歳。実生活でも数々のスキャンダルで浮名を流し、自ら「SMは得意分野だ」と豪語する監督は、たった2人だけの俳優と劇場の中という閉ざされた密室を舞台にセンセーショナルな官能の扉を開け放ってくれた。熟練の技を結集して尚(なお)もチャーミングな作品は1秒たりとも退屈しない緊張感に溢れ、その濃密さ故の満足に観客はニヤリと笑いたくなるほどだ。