助手席に陣取る私は、信号の点滅、突然に飛び出す人、自己中心的な自転車、不審な黒車などに一喜一憂して騒がしいことこの上ないのだけれど、熟練の運転者である妻は、そんな私の喧々にもどこ吹く風で悠々閑閑にすいすいと流していく。私はそれこそがお役目、と目を光らせるものの、コトコト静かに揺れる助手席の甘い座り心地に酒の巡りも良くなって、やがてまぶたがとろりと落ちてウトウト。
せめて退屈せぬよう
助手席にできることとは運転者を眠らせぬことであって、それこそが乗せていただいている恩義であり、忠節であって、居眠りなんぞは言語道断、不義不忠の狼藉(ろうぜき)である、などとは決して言わぬ妻。毎度助手席に乗り込む度、妻が運転に退屈せぬようにと、盛り上がり過ぎず、眠くなり過ぎずの音楽を持ち込んで乗用車に記憶させる(そういう機能が現代の乗用車には内蔵されている)。