30歳を過ぎ、涙腺が弱くなっているのは自覚している。とはいえスポーツでこんなにも胸が熱くなり、涙があふれたのは、2012年ロンドン五輪を取材して以来ではないだろうか。12日に行われた全国高校サッカー選手権の決勝、星稜(石川)対前橋育英(群馬)は、両校ともに県勢としての初優勝が懸かる戦いだった。
積み上げてきた練習の成果を発揮する舞台。監督の教えとピッチに立てない仲間の思いもある。開始の笛が鳴ると、両者は1つのボールをゴールへ運ぶため、105×68メートルのピッチを全力で走った。ボールを奪おうとするのも全力、ボールを奪われまいとするのも全力。頂点までの「あと1つ」をものにしたい、体当たりの攻防を続ける選手たちの鼓動が直に伝わり、前後半を2-2で終え延長戦に向かうイレブンの背中は、すでに涙でぼやけていた。
実はこの選手権が初のサッカー取材。6年前に運動部へ配属されて以降、個人競技中心の現場だった。私は競泳選手(1996年アトランタ五輪出場)だった経験もあり、勝つために必要な努力、大変さは理解している。ただサッカーを見て初めて感じることは多かった。