舞台畑を歩んできたアイルランドの実力派俳優、バリー・ウォード(35)が憧れの英映画監督、ケン・ローチ(78)の作品「ジミー、野を駆ける伝説」(公開中)で映画初主演を果たした。本作は昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門にノミネートされたほか、ローチ監督の引退発言も相まって映画ファンの注目を集めた。「レッドカーペットを歩く僕は、迷い込んだ子ウサギのように、ただおどおどしていただけですよ」。映画界ではいかにも“新人”と自嘲気味にジョークを飛ばすウォードだが、本作で演じたのは故郷アイルランドに実在した名もなき英雄、ジミー・グラルトンという難しい役どころだ。
調整力で主役獲得
国の分断を招いた内戦が終結してから10年が経過した1932年のアイルランド。すでに米ニューヨークに移住し市民権を取得していたジミー・グラルトン(ウォード)は、10年ぶりに故郷リートリム州の地を踏んだ。もめ事の解決で抜群のリーダーシップを発揮し、かつては衆望を一身に集めたジミーだったが、今はただ、年老いた母親、アリス(アイリーン・ヘンリー)との穏やかな生活を大切にしたいと願っている。しかし、ジミーが以前「人々が集い、学び、踊る場所になれば」と建設した「ジミーのホール」の再開を求める若者たちの声が高まり…。