グーグルマップを頼りに、生き別れとなった母親、ファティマ・ムンシさん(左)と再会を果たしたサルー・ブライアリーさん(中央)。奇跡の実話は映画化される=2012年2月15日、インド・マディヤ・プラデーシュ州カンドワ(AP)【拡大】
インドの貧しい農村で1981年に生まれたブライアリーさんは、幼い頃から駅で物ごいするため、兄と2人でたびたび列車の旅に出た。ところが5歳の時、途中の駅で居眠りしてしまった。目が覚めた時、“兄とはぐれる”と慌てて目の前の列車に飛び乗ると、列車に兄はいなかった。「あの時の一瞬の判断が、私の人生を永遠に変えたのです」(ブライアリーさん)
言葉もわからず、知人もいないブライアリーさんは、ひとりで電車に揺られ、故郷の街から約1600キロ離れたインド北東部のコルカタにたどり着き、しばらく路上で物ごい生活を続けた。
やがて警察に保護された後、孤児院に入れられ、運良く慈善団体の助けでオーストラリア・タスマニア州に住むブライアリー夫妻に引き取られた。シェル・ムンシ・カーンからサルー・ブライアリーに名前が変わり、豪州国籍を取得して新たな人生が始まった。
滝やダム記憶頼りに
英語を習得したブライアリーさんは、首都キャンベラにあるオーストラリア国際ホテルスクールでビジネスと接客などを学び、実業家として成功を収めた。しかし、故郷を忘れたことは一度もなかったという。