迷いや失敗あっていい
本作は指導者のあり方を考えるうえで示唆に富むエピソードが満載だ。西田が考える指導者論は天道の手法とはかなり違う。「人に嫌われてはだめでしょうね。そうかといって下に媚(こ)びて人気取りだけに腐心してもだめです。遠望がきく人がいいと思います。例えば『この交響曲を演奏し終えたら、きっと君たちは素晴らしいものを手にすることができるよ』と、下に希望を予感させることができる人。それが指導者に求められる資質でしょうね」。西田は天道が若い頃に経験した挫折の原因はそんな資質の欠如にあると考えている。
若き日の手痛い失敗とはどうお付き合いをすればいいのだろうか。西田は自らの経験を踏まえてこんな心構えを口にした。「若い頃は一生懸命が高じて、道を逆走してしまうこともあるかもしれません。でも、若い頃の大抵の失敗は成功につながると思っていいんです。一生懸命に努力した結果、最終的に何かを得られる-。そういう希望が持てる話であるならば、迷いや失敗は大いにあっていいと思います」。1月31日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:栗橋隆悦/SANKEI EXPRESS)