広報担当の方に、「毎年、僧侶の方々は、どんな思いで除夜を迎えていますか?」と聞いてみた。あんなに激しい撞き方をするなんて、特別な備えをしているのではないかと思ったからだ。彼は笑って、毎年恒例のことだから特別なことはないが、罪障消滅(ざいしょうしょうめつ)と人々の安穏を祈り、一年の最後で新年を迎える行事だからこそ、一つ一つ大切に撞く。同時に僧侶として日々心身を鍛えることが大事で、その成果であるとも教えてくれた。
2014年の後半は海外で過ごす時間が多く、季節感はおろか曜日感覚まで崩壊していた心身が撮影をしている内に徐々に整えられ、年中行事の節目の意味を改めて実感する。写真を撮りながら清々(すがすが)しい気持ちになり、これで心を切り替えて新年を迎えられると思った。
今年、京都では元日の夜から雪が降り、20センチほど積もった。地元の人からすれば雪は大変だけれども、僕のような旅人にとっては、街並みに彩りを与えてくれる。現代の街の姿が雪の下に沈み、真っ白なシルエットだけになる。そこに古(いにしえ)の京都の姿が浮かび上がる。