キーヤン作品ではしばしば使われ、象徴カラーともされる「ウルトラマリン」(ブルー)で彩られた蓮の花。60面の襖絵はほぼ1人で約1カ月で仕上げた=2014年10月8日、京都市東山区の青蓮院(田中幸美撮影)【拡大】
≪京都「青蓮院」 襖絵60面≫
キーヤンの初期の代表作で、壁画絵師であることを決定付けた作品が、京都市東山区にある古刹(こさつ)「青蓮院(しょうれんいん)」の60面にわたる襖絵(ふすまえ)だ。皇族や摂家が住持を務める門跡寺院として名高い青蓮院は、1100年の歴史を誇る。
こうした寺院には岩絵の具と膠(にかわ)、漆(うるし)などの伝統的な画材を使った日本画が描かれることが多い。だが、キーヤンは現代的なアクリル絵の具を使用する。アクリル絵の具は水性で、乾くのに1、2日もかかる伝統的な画材とは異なり、あっという間に乾くので、一気に描き上げることができる。それだけではない。鮮やかな色彩を放ち、曲線も力強く表現できるため、“勢いと切れ味”が持ち味のキーヤンの画風にぴったりなのだ。
しかし、歴史あるお寺にはたしてアクリル絵の具で描いていいものか。迷った。そこで、青蓮院の東伏見慈晃門主(もんす)に正直に打ち明けた。