キーヤン作品ではしばしば使われ、象徴カラーともされる「ウルトラマリン」(ブルー)で彩られた蓮の花。60面の襖絵はほぼ1人で約1カ月で仕上げた=2014年10月8日、京都市東山区の青蓮院(田中幸美撮影)【拡大】
構想から完成まで約1カ月。こうして2005年1月に完成した襖絵は、相阿弥の庭を見渡す部屋にブルーグレーの落ち着いた蓮が、真ん中の部屋にはワインレッドの蓮、そして奧の部屋には「ウルトラマリン」と呼ばれるキーヤン作品を象徴する青を使った蓮が描かれた。
襖絵のお披露目の集いには、ロックのプロデューサーをしていたころから45年来の付き合いのある内田裕也さん(75)、樹木希林(きき・きりん)さん(71)夫妻を招待した。キーヤンが絵を描くことを知らなかった2人は喜んだ。
後日、希林さんから電話で「その枯れた蓮をうちに描きませんか」と誘われた。家を建て直したときに4枚の板戸を作ったが、描き手が見つからなかった。枯れた蓮だけでなく4輪の青い蓮の花と1つのつぼみも描き加えた希林さんの家の襖絵は、「蘇る蓮」と名付けた。海外留学で英語が堪能だった希林さんの長女、也哉子(ややこ)さん(38)が「Lotus(ロータス) Revives(リバイブス)」というしゃれた名前に訳した。希林さんは「板戸が腐って朽ちても絵の具は残るらしい。なんか木村英輝のようだ」とコメントを寄せた。枯れた蓮は蘇り、輪廻を体現した。