オバマ大統領のイスラム国殲滅に向けた戦略の第一歩は、イスラム国の勢力をシリア領内に封じ込めることであり、モスル奪還の成否は戦略の試金石となる。また、このところ、イスラム国との戦況は有志連合側の優勢が伝えられる。1月下旬、シリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)の攻防では、有志連合の空爆支援を受けた現地の地上部隊が町全域をほぼ奪還。イスラム国は油田都市キルクークを攻撃して反攻に出たが、撃退された。
有志連合の空爆と、現状ではイスラム国との地上戦闘をほぼ一手で担っているクルド人部隊(ペシュメルガ)の奮闘が奏功している形だ。空爆への参加を中断していたアラブ首長国連邦(UAE)も7日、国営首長国通信を通じ、F16戦闘機の飛行部隊をヨルダンに派遣すると発表。有志連合側は勢いを得ている。
蛮行報道で風向きに変化
しかし、モスル奪還には課題も多く、実現は容易ではない。約145万人が住む大都市だけに攻略には「市街戦が想定される」(米当局者)。空爆支援にも限界がある。また、クルド人部隊には自分たちの居住領域の防衛が最優先であり、有志連合が目指す「イスラム国殲滅」に向けて進軍を続けるのは難しい。モスルをめぐる地上戦の主力はイラク軍が担わざるを得ないが、クルド人部隊に比べると士気が格段に低いのが現状だ。