【アメリカを読む】
バラク・オバマ米大統領(53)が2010年に続き2回目となる「国家安全保障戦略」を発表した。大統領の前書きで開口一番、失業率の低下という実績を記した奇妙な戦略文書には、「軍事より外交」という自らの政策を正当化する以上の目的は見当たらないといっても過言ではない代物だ。
発表者の「無力さ」
10年版の戦略を発表したのは当時のヒラリー・クリントン国務長官(67)だった。15年版が発表された6日、ジョン・ケリー国務長官(71)はドイツ出張中。チャック・ヘーゲル国防長官(68)はオバマ氏に更迭され、後任のアシュトン・カーター前国防副長官(60)の承認を待つ身だ。発表者の人選がオバマ政権における安保戦略の「力」のありかを物語っている。
「ワシントンでは21世紀の米国の指導力に関する議論がかまびすしいが、問題は、シリアの反体制派に対する武装を始めるべきだったとか、ウクライナに殺傷兵器を供与するかとかではない。問題は将来の米国の指導力がどうなるかなのです」