一聴すると、ボーカルスタイルにプリンスの影響がうかがえるが、それは、ファンクのレジェンド、スライ・ストーンに通じる歌唱法でもあるし、デトロイト・テクノの奇才、ムーディーマンとの同世代的な共鳴を見いだせないでもない。いずれにせよ、革新的なブラックミュージックの系譜を受け継ぎ、同時に、自らもイノベーターたらんとする意欲作であることは間違いない。大ヒットした名曲「ブラウン・シュガー」のようなスウィートなR&Bが期待される中、ロックやファンク、ジャズやソウルをクロスオーバーさせて、あえてアンダーグラウンドな雰囲気を充満させた作品を発表するあたりにアーティストとしての真摯(しんし)な心意気を感じる。
レコード会社の希望により本年度のグラミーに間に合わせるために元々は2014年秋のリリースが計画されたという証言が、クエストラヴによってWEB上で投稿されているが、そもそも15年かけた(さまざまなドラマや葛藤があったのだろうと推測される)新作の制作という事実から、その本気度が伝わってくる。