しかも、いったんは延期して15年のリリースが決まったにもかかわらず、アメリカのファーガソンでの黒人の射殺事件を起こした白人警察官の不起訴が14年11月末に決まったことを受けて、急遽14年12月の緊急リリースとなったらしい。「音楽を通してメッセージを伝える」というコメントをディアンジェロは発表している。
その時間のかけ方、メッセージ性、そして、玄人好みの渋いサウンド(あえて言い換えている)とさまざまな角度から見ても、即席のヒットを求めがちな音楽産業にとっては異例のアルバムリリースである。この作品がメジャーから発売されるというアメリカの懐の深さとリベラルな空気を僕はうらやましく思っている。
それにしても、過度の警戒は機会を損失すると痛感させられた。世間の評判と僕の見解は必ずしも一致しない。でも、その逆もありえるのだ。しかも、ディアンジェロの場合、繰り返し聴けば聴くほどその良さが堪能できるアルバムなので、軽い気持ちの試聴では判断できないのだ。これは間違いなく重要作だ。(クリエイティブ・ディレクター/DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)