暗黒の水中を抜けてきた僕の目の前に、まばゆいばかりの光りのカーテンが広がった。海中で静かに揺らめきながら、暗黒と光明の境をはっきりと分ける。まるで命にパワーを充電するエネルギーに包まれるように、全身を光に浸して、その源である太陽を見上げる。そして、そこから発散されて、水中をキラキラと揺らめかす光のラインに、しばらくの間見入ってしまう。
穏やかで、静寂な空間。レギュレーターから吐き出す泡が、水面を揺らして、そこに映し出された虚像を消してしまうことすら、もったいないと感じて、ギリギリまで呼吸することを我慢してしまっていた。
この世に、こんな世界があるなんて。僕は感動しながら光のカーテンに包まれながら、またゆっくりと暗闇へと潜行を開始した。暗黒があるからこそ、この光明がより価値のあるもののように思える。
セノーテは、サンゴ礁が隆起してできた天然の井戸のことだ。中南米のユカタン半島全域で見られる。山のないユカタン半島では、川もなく、雨水が地下に浸透し、長い年月をかけて石灰岩が侵食されて、地下水脈が形成された。地底の川となり、ある部分がさらに侵食され、陥没して地表に現れて、天然の泉となった地形のことを言う。