【京都うまいものめぐり】
≪「オーベルジュ」支える≫
明治の煙草王、村井吉兵衛(1864~1926年)の別邸として1909(明治42)年に建てられた「長楽館」。京都随一の花見の名所で知られる円山公園内に位置し、86年には京都市指定有形文化財に指定された明治の名建築としても名高いが、この建物の1階食堂の間がフレンチレストランの「ル シェーヌ」だ。2009年1月の開業以来、地元・京都と近江の新鮮野菜をふんだんに使った季節感あふれる独創的なメニューを、ライブ感覚重視のスタイルで提供することで知られる。春と秋の観光シーズンには舌の肥えた観光客でにぎわう名店だ。
館内に足を踏み入れると、その豪華さに息を飲む。瀟洒(しょうしゃ)なシャンデリアや、細部にまで緻密な装飾を施した天井や壁面のレリーフなど、英国ヴィクトリア調のネオ・クラシック洋式(18~19世紀)に彩られた館内は、夢のようなひとときを演出してくれる。
そんな館内はル シェーヌをはじめ「長楽館カフェ」、イタリア料理店の「リストランテ コーラル」、そして宿泊施設の「ホテル長楽館」(6室)で構成しているが、とりわけル シェーヌは大きな意味を持つ。