青銅器は約2000年前の弥生時代に使われていた。材料の銅などは中国大陸、朝鮮半島から入手。極めて高度な加工技術を持つ専門職人が製作したと推測されている。
新品の青銅器は、黄金色に輝いていたという。弥生人は神秘性を感じていたのではないか。
民衆が手にすることは不可能だった。権力者か、祭事を仕切った者が所持していたのだろう。その貴重な青銅器を埋めたのだ。それなりの理由があったに違いない。
そうだ。現場へ行こう。車で移動した。出雲市斐川(ひかわ)町。郊外に小高い丘。ここが荒神谷。恐ろしげな地名。傘をさして出土地を凝視する。人里離れた森。見通しの悪い山の斜面。やはり隠匿説が濃厚ではないか。敗戦時。部族の有力者たちが所持していた青銅器を集め、ごく少数の者がひそかに埋めた。部族が再起したとき、掘り出そうとした。だが、その日は来なかった。部族の記憶は忘れ去られ、現代に蘇った。そんなことを思う。雨が強くなった。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。