震災で、ホテルから避難者をヘリコプターで救助する消防職員の姿が心に焼き付き、自問自答を続けた。大学時代、消防職員の父(59)に憧れ、仙台市消防局の採用試験も受けたが、不合格に。「自分がやりたかったのは、緊急時に困っている人に直接手を差し伸べられる仕事だったはず。なぜ、あと1年頑張って消防に入らなかったのか」。災害を前に何もできない無力感と、後悔が募った。
2014年2月、「後悔して過ごすよりもこの仕事に賭けてみたい」と退職し、退路を断って採用試験に再挑戦した。結果は合格。日頃、無口な父に報告すると、一言、「よかったね」と言葉をかけてくれた。
「精神的にも肉体的にも強さが求められる仕事だが、人を助けられる存在になりたい」と恵津さん。震災をへて培った決意は「かつての漠然とした憧れとは違う」と断言。「震災で多くの人に助けてもらった分、全国の災害現場で活動していきたい」。その言葉に、もう迷いはない。(滝口亜希、写真も/SANKEI EXPRESS)