東日本大震災は11日で4年を迎えた。住まいや道路の復旧は徐々に進み、被災者たちは生活再建へ踏み出すが、いまなお仮設住宅で暮らす人々も多い。莫大(ばくだい)な予算を投じた集中復興期間はあと1年。被災地の今を見つめた。
「震災で色を失った故郷をタイルで彩りたい」
≪牡鹿郡女川町≫
宮城県女川町で「みなとまちセラミカ工房」の代表、阿部鳴美さん(54)はそう願う。工房で手掛けるのは、素焼きのタイルに絵柄や模様を描き上薬を盛り窯で焼く「スペインタイル」。鮮やかで色あせないのが特徴だ。
震災前、阿部さんは女川で陶芸サークルを主宰していたが、津波で全員が家を失い、1人は亡くなった。活動拠点の公民館、作品や道具なども流失。避難所と仮設住宅暮らしが半年ほど過ぎたとき、阿部さんは女川町復興連絡協議会のメンバーらと交流する中で、スペインタイルを知った。
震災から1年後の3月11日、視察したスペインで衝撃を受けた。タイルに囲まれた鮮やかな街。「これしかないと感じた」(阿部さん)。帰国後、町内の仮設商店街にスペインタイルの工房を開設、現在は女性8人で制作に励んでいる。