合言葉は「タンクローリー!」。(左から)中村洪太さん、文子さん、小春さん、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる、片岡聡さん、菊地啓子さん。菊地さんのドレスはこの日のためのお手製(越智貴雄さん撮影)【拡大】
ちまたでは自閉症支援のマニュアル本もはびこっているが、北海道を中心に自閉症のピアサポート(当事者同士の相互支援)活動を行う菊地啓子さんは、「知識から入るんじゃなくて、その人に何が必要なのか目の前にいる人から受け取ってほしい」と訴える。専門家は自閉症の特性を「空気が読めない」「コミュニケーションが苦手」などとひとくくりにしがちだが、一概には言えない。知識や先入観が時に当事者の可能性を封じてしまうリスクもあると菊地さんは危惧している。
文子さんも「私は自閉症に対する専門的な知識がないまま子育てをしていたので、逆によかったのだと思う」と振り返る。文子さんは深刻だろうと思われることも、笑いながら話してくれる。失礼ながら、脳天気だと思った。そして、それは寛容ということであり、素晴らしい人間力だとも思う。
片岡聡さんはそんな中村家の話を聞いて「うらやましい」という。東京大学を卒業した薬学博士でもある片岡さんは、統合失調症と誤診され精神科に入院した経験を経て、5年前にやっと自閉症と診断された。子供の頃、自閉症に多い、ぶつぶつ独り言をいう癖やぴょんぴょん飛ぶ行動があったが、「恥ずかしいからやめなさい」と禁止され、ずっと我慢してきたそうだ。