多産祈願する儀式描く
奇跡的な保存状態の秘密は、隙間なく町全体を埋め尽くした6メートル以上も積もった火山灰にあった。火山灰には乾燥剤として用いられるシリカゲルに似た成分が含まれ、湿気を吸収。このため、壁画や美術品の劣化が最小限に食い止められたと考えられている。
「ディオニソスの儀式」は、多産を祈願する儀式とされる。かつて古代ローマ帝国の享楽的な歓楽街として栄えたとされるポンペイの遺跡からは、艶めかしい絵画が多数出土しているが、この儀式を描いた壁画にも、その種の絵画が含まれている。ディオニソスはギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神で、多産の御利益があると考えられていたようだ。
儀式の作法を読み上げる裸の少年の姿や、入信者の男女がムチで打たれながら絡むシーンなどが流麗かつ力強い筆遣いで描かれている。
例年200万人以上が訪れていたポンペイ遺跡。イタリア政府は修復を経て、大幅な観光客増を見込んでいる。(SANKEI EXPRESS)