紙すき作業をする「細川紙技術者協会」の鷹野禎三会長=2014年10月28日、埼玉県秩父郡東秩父村(栗橋隆悦撮影)【拡大】
文化庁は28日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の補助機関が「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」を無形文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。登録勧告が覆された例はなく、11月下旬にフランス・パリで開かれるユネスコ政府間委員会で登録が決まる見通しだ。登録対象は、国の重要無形文化財に指定されている細川紙(埼玉県)と本美濃紙(岐阜県)、石州半紙(島根県)。いずれもクワ科の植物、コウゾの繊維だけを原料に手すきで作られ、伝統的な製法を伝えている。地元は喜びに沸き、技術を伝える職人らは「責任を感じる」と身を引き締めた。
海外への発信期待
下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相は会見で「和紙の振興と継承の取り組みが一層進み、地方創生にも結びつくよう、登録に最善を尽くしたい」と述べた。登録を機に他地域の製品も含めて和紙が見直され、伝統工芸の振興や海外への日本文化の発信につながると期待される。
2009年に石州半紙が単独で無形文化遺産になったが、11年の登録を目指した本美濃紙は「石州半紙と類似している」として退けられた。
このため、政府は「和紙」として登録の枠組みを広げ、13年に細川紙、本美濃紙、石州半紙を一括し、再提案していた。