和食のユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産登録や、各地で施行される日本酒での乾杯推奨条例を背景に、若い世代や女性の“日本酒回帰”が進んでいる。この流れを牽引(けんいん)しているのが、爽やかな口あたりで人気の発泡性のスパークリング日本酒だ。中でも、宝酒造(本社・京都市下京区)の「澪(みお)」(300ミリリットル入り、税別475円)は前年比4倍の出荷量を記録。同社は「今後も成長が期待できる商品」として増産態勢に入った。澪を製造しているのは、原材料や製法にこだわった高品質な日本酒の製造、開発を行う同社の白壁蔵(しらかべぐら、神戸市東灘区)と呼ばれる工場だ。澪の増産に向け、拡張工事が行われたばかりの同工場を訪ねた。
神戸港と六甲山に囲まれた絶好のロケーションを背景に、「造り酒屋」をイメージしたというモダンな外観が目をひく。巨大なタンクの並ぶ工場内部は、日本酒の甘い香りのなか、白い作業服を着た従業員がてきぱきと計器類を操作していた。
山から吹き降ろす冷たい六甲おろし、兵庫県内で生産される山田錦をはじめとする良質な酒米、「宮水」と呼ばれる地下水…日本酒造りに適した立地のもと、白壁蔵(地上6階、延べ床面積約6338平方メートル)は高品質な日本酒造りを目指して平成13年に完成した。