――猪目洞窟はどこにあるのですか
「ああ。この先だよ。昔は人魂(ひとだま)が出たそうだ。うちのじいさんは見たことがある。洞窟から骨がいっぱい出た。調べたら、弥生時代の人骨だって」
出雲国風土記。不気味な記述。宇賀郷の北海に磯。西側に洞窟がある。人は入ることができない。浅いのか、深いのか、わからない。
夢にこの洞窟の辺に至った者は、必ず死ぬという。黄泉の穴なり。
坂道を降りる。見上げる。巨大な岩盤がのしかかってくるようだ。一角に小さな祠(ほこら)。その先に洞窟が見える。入り口。石柱。なんの標示もないが、境界を示しているようだ。足を踏み入れるのは、ためらわれる。洞窟の奥から冷気。写真を撮影した。そのまま立ち去った。幸い、まだ、猪目洞窟の夢は見ていない。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。