「新世界」のドボルザークや「わが祖国」のスメタナ、バルトークら東欧は優れた音楽家を輩出してきた。西ヨーロッパにはない民族色も魅力の一つだ。モーストリー・クラシック5月号は「『新世界』『わが祖国』 東欧の音楽家たち」を特集している。
「新世界」ほど親しまれている作品はあまりないが、「遠き山に日は落ちて」や「家路」のタイトルのほうがなじみがあるかもしれない。堀内敬三が「新世界」に歌詞をつけた編曲は小学校の下校の時間などによく流された。「遠き山に日は落ちて」という歌詞とメロディーを覚えている人もいるのではないだろうか。
故郷を思い作曲
アントニン・ドボルザークは1841年、チェコ西部ボヘミアの小村で生まれた。父親は小さなホテルを兼ねた精肉店を営んでいた。長男のドボルザークは跡継ぎを期待されていたが、音楽の才能を認められ、苦学して音楽学校を卒業した。
「スラヴ舞曲集」が大ヒットし、一躍名前が知られるようになった。ニューヨークのナショナル音楽院の院長に招聘(しょうへい)され、92年、大西洋を渡る。新世界アメリカから故郷ボヘミアを思い、作曲された交響曲第9番「新世界」は93年12月、ザイドル指揮ニューヨーク・フィルで初演された。