私たちの先にある未来
過去への敬意を持つことは、全てにおいて善であり尊いことだと私は考える。しかし、そこから未来へ歩みを進めるのはわれわれ自身だ。自分の力と想像力を信じ、過去から継承されたものを前に推し進めていく姿こそ、過去への最大の敬意だろう。伝統工芸といわれる世界は、このことをもっと真剣に考える必要があるのではないか。過去にとらわれるだけならまだしも、その恩恵にしがみつき、勝手に作り上げた伝統像を盾に目先の結果を追い求める。本質を見失ったそうした品々を目にすると、胸が裂けそうな思いになる。
私は、伝統の本質である、過去に学び未来を作るという行為を改めて突き詰めていきたい。“昔ながら”を選ぶことも自由、“現代”を最大限に生かすことも自由だ。しかし、その先に未来がしっかりと見えなければ美しい品を感じることはない。「しのぎ」にはそうした境地を見た。そして、李荘窯の品の多くにはその雰囲気が満ち満ちているのである。(企画プロデュース会社「丸若屋」代表 丸若裕俊/SANKEI EXPRESS)