「何が一番うれしいかというと、ファンの皆さまが舞台を見に来てくださること。この瞬間、どれだけお話ししても全部は伝わらない、一日一分でも多く舞台を見てほしい」。さわやかな笑顔を浮かべ、ファンへの思いを語った。歌舞伎界注目の若手の一人。祖父は人間国宝の坂田藤十郎、将来は上方の名門・成駒家を担う立場でもある。今年は父親の中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名公演で全国を回るなど多忙な日々が続いている。
1歳で、初お目見え。4歳で初舞台を踏んだ。歌舞伎の世界で生きていく、と意識したのは高校1年生の時。祖父の「坂田藤十郎襲名公演」で、祖父と同じ舞台に立ち、立役、女形の両方をこなす祖父の姿、魂でも宿っているかのような完成された芸を目の当たりにし、「祖父のようになりたい」と思ったという。
幼いときから歌舞伎が好きで、「歌舞伎の苦労なら苦労とも思わない」ことも幸いだった。大学3年の就職活動の時も迷いはなく、歌舞伎の世界へ。「普通に考えたらおじいちゃんなんですけど、歌舞伎の世界では大先輩。自分が目標とする役者で、大きな存在です」と目を輝かせた。