エレベーターあるいは階段を利用して丘の麓に着くと、最初に目に入るのは白い塔のモニュメントだ。塔の真ん中からは猫が体半分を突き出している。丘には大小10あまりのモニュメントが点在。実はそれぞれのモニュメントは仏教の世界を守護する十二天(八方の方位と天地、日月を守護する神)にちなんだ形と配置になっているという。
例えば、北の方角には北をつかさどる「毘沙門天(びしゃもんてん)」にちなんで毘沙門天が踏みつける天邪鬼のモニュメントが置かれる。庭園の中央のひときわ高いところにそびえ立つのは、「日天」が放つ「光明の塔」だ。塔の下にたたずんでみた。日と風と光が一点に集まるようで、えも言われぬパワーを感じた。
≪石の「気持ち」聞いて 空間が躍動する≫
庭園を先に進もうとしたところ、下を向いて大理石の階段を見つめる一行に出くわした。聞くと、この庭園の制作者、杭谷一東(くえたに・いっとう)さんだという。次第に大きくなった大理石の継ぎ目の補修について打ち合わせをしていた。杭谷さんは2~3カ月ごとに日本とイタリアを行き来する生活を繰り返すが、地元・世羅町で個展を開催するため帰国していた。突然目の前に現れた作家に緊張しながら話をうかがった。