もっと言えば、「チェチェンという敗戦国に正義はない」という現実を念頭に、ロシア側とは違う角度から真実に光を当てようという試みだった。「世の中で語られるチェチェン紛争はロシア側が語ったものでしょう。また、欧州で教育を受けた私たちは『戦争で勝った方がいい人』との教えを受けてきました。でも実はそうではないのだと、僕はこの映画で示そうとしました。この映画はアンチ・プーチン(ロシア大統領)プロパガンダです」
暴力は加害者も巻き込む
この物語には、ロシア軍に強制入隊させられ、次第に殺人兵器と化していくごく普通のロシア人青年(マキシム・エメリヤノフ)の姿も断続的に挿入されている。アザナヴィシウス監督は「戦争が起きたとき、暴力に巻き込まれるのは、被害者ばかりではなく、やがて殺人者になっていくであろう人々も含まれます。私はその両者を語りたかったのです」とその意図を説明した。
もの悲しそうな目で語るママツイエフの奥行きのある演技は圧巻だ。「彼はチェチェン人の素人俳優で、私は450人の候補者から選びました。彼には子役にありがちな、わざとらしさがなく、泣き方や悲しい表情が自然だったからです」