当初、映画で有名になった地球外生命体の「エイリアン」や「プレデター」とのコラボレーションにも食指が動き、FROGMAN監督は本国の担当者に打診したが、諸事情で断られたという。だとすれば、もう「フランダースの犬」しかない…。「絵の才能に恵まれながら、放火の疑いをかけられ村八分となり、不遇な人生に終わったネロと、愛犬のパトラッシュが天国に行かず、実は地獄に堕ちていた…。彼らが人類に復讐する物語にすればいいのではないか?」。「天才バカボン」と「フランダースの犬」がタッグを組むことで生まれる唐突感は申し分なく、物語にもだいぶん奥行きが出る。
だが、「フランダースの犬」を制作した日本アニメーションがよく首を縦に振ったものだ。「『赤塚先生の生誕80周年記念作品ということでしたら話だけでも聞きましょう』とおっしゃってくださいました」とFROGMAN監督。社長や幹部の前で行ったプレゼンテーションでは、「映画はネロやパトラッシュを決してこけにするものではなく、ネロとパトラッシュが円満に天国に行けるような物語にしたいと強調しました。また、僕の中では、ネロとパトラッシュが天国に召されるのは納得できなかったし、一方で、本当はハッピーエンドを期待していたのに、あのあまりに残念な最期は子供ながらに悲しかったと、素直な気持ちを真摯(しんし)に伝えました」。社内ではコラボレーションに反対する意見も出たようだが、最終的にゴーサインが出るや、製作過程で内容に関する注文はほとんどなかったそうだ。