こうした患者情報の一元管理で、医療機関や介護施設などの連携不備によって起こる薬の過剰投与や大量の残薬(飲み残し)問題は確実に減るはずだ。
さらに1人の医師の診断結果を複数の医師が閲覧することが可能になることで、診察や投薬がガラス張りになり、誤診や医療過誤を減らす効果も期待できる。そして無駄な診療や投薬が減って、副次的に医療費の削減も進むだろう。
インターネットとICT(情報通信技術)が急速に進歩しているのに、患者情報の一元管理や病院間連携などが進まなかったのは、患者の利益よりも病院や医師、医薬品業界などの既得権益に対する配慮が優先されてきたためである。
安倍晋三首相は来年から5年間を集中改革期間として戸籍やパスポートまでも包括するマイナンバー利用を加速するよう関係閣僚に指示した。国民のプライバシーを守るしくみの構築は当然のことだ。今後はそれを理由に医療分野へのマイナンバー活用が後退することは許されない。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)