【メディアトリガーplus(試聴無料)】映画「奇跡のひと_マリーとマルグリット」(ジャン=ピエール・アメリス監督)。公開中(メゾン提供)。(C)2014-Escazal_Films/France_3_Cinema-Rhone-Alpes_Cinema【拡大】
□映画「奇跡のひと マリーとマルグリット」
「ハンディキャップを抱えた少女が困難を乗り越える感動作」、もしくは「ヘレン・ケラー物語のフランス修道院バージョン」であろうとタカをくくって試写室の席についた私は、冒頭数十秒のシーンを見て自身の軽率な先入観を恥じた。そして、この映画は「ただならぬ光を放つ作品」かもしれないという予感とともに物語の中へ吸い込まれていった。
野生児を人間に
19世紀末のフランスのポアティエにある修道院が舞台。ある日、生まれつき目も耳も不自由な少女マリー(アリアーナ・リヴォアール)が父とともにみすぼらしい馬車に乗ってやってくる。髪もとかさず風呂にも入らず過ごしているような汚い身なりのマリーが、空に向かって手をかざしながら全身で光と風を感じている。一切せりふもないこのファーストシーンがナントも饒舌(じょうぜつ)だ。隣に座る父も慈しみ深い視線で少女を見つめ額にキスをする。