ガイドのミン・ハイさんの父親、チャウさんは戦争体験者で、現在67歳。20代で南ベトナムに徴兵されたという。「平和となった今、また稲作ができるのがうれしい」と話すが、戦争当時については「北側の親戚や友人に会えなくなったのがつらかった」と言葉少なだった。
平和が戻って40年の歳月が流れたが、それと引き換えに思い出したくもない体験を抱えている人が今もいることを改めて思い知らされた。
橋の北側にあるヴィンモック村も訪れた。雨のように空爆が続いた激戦地のひとつだが、疎開を拒んだ村民約300人が総延長3キロにも及ぶ地下道を掘り、そこで生活した。入り口は数カ所あるが、どこもかがまなくては進めない狭さ。当然真っ暗だ。約5年間暮らしたというが、日の当たらない生活を続けた結果、今も皮膚病に悩む村民は少なくないそうだ。
帰路の途中、竹ざおで「Dau」(桃の一種)を採っている村の子供たちを見かけた。あまりにも楽しそうなその姿は、重苦しくなっていた心を解き放つかのように、素朴な、それでいて麗しきベトナムを感じさせてくれた。(文・写真:カメラマン 佐藤良一/SANKEI EXPRESS)