人は許せるのか
「どうすれば人を許せるのか?」も本作が提示したもう1つの大きなテーマだ。樋口のスタンスはなかなか示唆に富んだものだった。「そもそも人を恨むことが苦手なんですよね。恨むという行為は、自分の中に悪いエネルギーを残してしまう気がします。それでは自分が損してしまいます。むしろ、相手を『かわいそう』と思った方が、自分からいい気が出てくる感じがするんですよ。『失礼ね』『なにこの人!』と感じて、相手を恨みそうになったら、まずは『かわいそうね』と考えて、歯止めをかけるようにしています」
逆に佐藤は、実父でもある名優、三國連太郎との確執報道を念頭に、野太いだみ声を絞り出し、ユーモアたっぷりに樋口を“挑発”してみせた。「僕は人を恨んでずーっと生きてきたんです。恨みつらみしかありません。わら人形を何個作ったことか…。でも、僕みたいに狭小な人間だからこそ、篤史の思いについて大きくイメージを膨らませることができたのかもしれないですよね。つまり、その思いとは、篤史が良子の死期を早めてしまったかもしれないある青年を許す心理のことですが。僕自身の中でも考えるべきテーマとしてだんだんと大きくなっていきました。そして、その答えは天国から『妻』が教えてくれた。僕は人を恨んで生きてきた人間だからこそ、篤史としてうまくそこに帰結できたのだと思うのですが…」。6月20日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎瑞穂/SANKEI EXPRESS)