自分に生まれてラッキー
アートに心が向かった理由は、「いじめや失恋」と真理さんは話す。子供の頃からずっといじめを受け続け、「一生懸命に話してもどうせ伝わらないと、コミュニケーションに対して悲観的になっていた」。高校入学時には「絶対、友達をつくらない」と決意し、意思表示のため義足に絵を描き始め、眉毛をそり落とし、真緑に髪の毛を染めた。「芋虫が触覚を伸ばして、鳥に狙われないように威嚇する感じ」
そんな彼女なりの表現が美術部の先生の目にとまり、「公募展に出してみたら」と勧められたのが「群馬青年ビエンナーレ’05」だった。真理さんは義足をテーマにした作品を製作し、アーティストとして活動するきっかけをつかむ。「ずっと頭の中にある言葉にできない思いを処理するのに精いっぱいで、その出口がアートだった」
とがり続けていた真理さんだが、最近は少し変わってきたのだという。「自分の鎧(よろい)のためにつくっていたのが、自分を許すための作品に昇華してきた。美しいねって思ってくれるだけで十分」