衆院平和安全法制特別委で意見を述べる宮崎礼壹・元内閣法制局長官。「集団的自衛権の行使容認は限定的と称するものも含め、従来の政府見解とは相いれない」と主張した=2015年6月22日、国会(共同)【拡大】
実のところ文脈から観てこの一節は、バラク・オバマ大統領(53)率いる米国に向けられている。“関与政策”と形容するにしても、あまりに腰の引けた対中安全保障戦略を大歓迎して発せられた、中国の国防白書にしては極めて珍しいホンネ。ただ中国は、はるか以前より日本国内のお仲間の、有り難い協力にほくそ笑んできており、オバマ大統領に向けた前述の一節は次の如く深読みして差し支えあるまい。
《日本でもこれまで通り、全般的に好ましい環境が形成され、中国の発展にとり戦略的好機は変わらない。隙だらけの日本のお仲間と心を通わせ課題を達成できる》
米軍介入前に尖閣侵攻
集団的自衛権の限定的行使に反対する日本人は無意識?だとしても、明らかに利敵行為を犯している。《中国の軍事戦略》の発表わずか半月前《米国防総省の年次報告書》が公表されたが、両資料を併読してみるがよい。《年次報告書》を総合すると、中国は米軍との本格的紛争を望まず、直接的衝突を回避。それ故、作戦地域を限定・特化し、米軍介入以前に勝利する短期戦を追求する-と考えられる。限定・特化した作戦地域には尖閣諸島が入る。無人の小島群・尖閣諸島は個別的自衛権の対象で、わが国独力で守らねば恥ずかしいが、米国との集団的自衛権が限定的ながら確立されていれば、抑止力強化につながり、中国もやすやすとは侵略できない。中国が日本に「軍国主義復活」のレッテルを貼り、日本が集団的自衛権を行使できるフツーの国になることを阻止したい理由がここにある。