少し気を緩めれば、あっという間に命を失ってしまう極めて危険な取材もいとわず、米国のジョシュア・オッペンハイマー監督(40)は民兵、マフィア、事件の犠牲者を10年以上にわたって追いかけ、彼らの社会との関わり方を映画というフィールドで検証してきた。
罪を認めさせたい
新作ドキュメンタリー「ルック・オブ・サイレンス」でカメラを向けたのは、1960年代のインドネシアで「共産主義者」とレッテルを貼られた100万人もの国民が問答無用で命を奪われた大虐殺の実行者たちだ。
前作「アクト・オブ・キリング」の続編にあたる本作は、殺害の実行者たちに好き勝手に“武勇伝”を語らせる手法をとらず、兄を殺害された弟が殺害の実行者たちを訪ね、真相を語らせようという危険かつ挑戦的な内容だ。
主人公は眼鏡技師のアディ・ルクン(47)。前作を見た彼は、兄をなぶり殺す様子を喜々として語る加害者たちのふてぶてしさに衝撃を受け、2012年にオッペンハイマー監督と接触。「彼らに何としても罪を認めさせたい。そうすることが、死んだ兄や、今も権力者の地位に就く彼らの存在におびえながら暮らしている母のためにもなる」と、自ら加害者のもとを訪れ、真相を問いただすことを提案し、「ルック・オブ・サイレンス」の企画が動き出した。