作品には、大量虐殺に加担した後、現在は多くの犠牲者を出した地域の地方議会議長に上りつめたM・Y・バスランなる人物が登場。「あまり過去を蒸し返すと同じことが起きるぞ」とルクンを脅迫する場面は圧巻だ。
安保理の問題提起望む
何のおとがめもなしに普通の暮らしを続ける人物、ひいては権力者たちの精神構造とはどんなものなのだろう。オッペンハイマー監督は意外なことを口にした。「彼らは平穏に生きているとは思えません。苦悩を抱えているわけです。自分自身が生きながらえるために、人に嘘をつき、自分をごまかし、自分の中にある良心を殺しているわけです。人によっては、自分が作りあげた嘘やファンタジーにしがみついていなければとても生きてはいけないのです」
そんな彼らは自分の過去の行為を正当化するために、結局は「社会が悪い」と責任を転嫁してしまい、責任の所在は永遠に不透明なものとなる。「若い世代に対してはプロパガンダで(『社会が悪い』『共産主義が悪い』と)洗脳していきます。そうした行為が犠牲者の遺族にどんな影響をもたらすのかを掘り下げたものが、この『ルック・オブ・サイレンス』なのです」。オッペンハイマー監督は力を込めた。