ギリシャの国旗を振って、財政再建策への「反対」が多数を占めた国民投票の結果を喜ぶ若者たち=2015年7月5日、ギリシャ・首都アテネ(ロイター)【拡大】
「チプラス氏の瀬戸際外交は“勝利”とはほど遠い」。アテネの消息筋はこう語り、ため息をついた。
チキンレース。欧米メディアはしばしば、約5カ月に及んだギリシャとEUの協議を度胸試しのゲームになぞらえてきた。チプラス政権は1月、財政緊縮策への国民の不満を追い風に総選挙で勝利して発足。ユーロ圏諸国は2月下旬、金融支援の4カ月延長を決定したが、チプラス政権は付加価値税の増税などを含むEUなどの再建策は、「不合理」だと抵抗し続けた。
チプラス首相は6月22日、付加価値税と法人税の税率引き上げなどを盛り込んだ再建案を提出。一方で27日に突然、国民投票の実施を表明した。投票日は支援枠組みの期限が過ぎた後の7月5日だった。EUのユンケル欧州委員長は「裏切られた」と不信感を隠さなかった。
もっとも、ユーロ圏諸国は危機の波及を最小限に防ぐ布石も打っていた。09年には、ギリシャが抱える3000億ユーロ(約40兆円)とされる長期債務の大半を民間銀行が保有していた。しかし10、12年の2度にわたる支援で、債権は国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)に移し替えられた形となった。