「花魁(おいらん)」(展示用非売品)。花魁が履いていたものではなく、花魁をイメージした。大門と呼ばれていた遊郭の正門を正面に大きな牡丹をあしらい、裏には丸い窓(張見世)から中の金魚(花魁)を覗くことができる=2015年6月17日(田中幸美撮影)【拡大】
【大人の時間】
赤い王冠の絵をラインストーンで彩り、一見するとウェッジソールのサンダルのように見える。左に般若、右には能面が描かれた一対物も。下駄(げた)アーティスト、鈴木千恵さん(41)の作品だ。履いてしまったらせっかくの絵柄が見えなくなるのが惜しいくらいビビッドな下駄は、履物というよりオブジェのようだ。
鈴木さんの下駄には大きな特徴がある。鼻緒で絵が部分的に隠れるのを避けるため、かかとをメーンにデザインする。左右一対をキャンバスに見立てて大胆に描くこともあり、時には下駄の側面も使う。絵付けもとてもユニークだ。
以前見た映画のワンシーンや日常の風景などをモチーフにするが、スケッチなどはあまりせず、描きたいテーマを箇条書きのメモにするという。
映画をモチーフに
たとえば、「がしゃどくろ」。好きな浮世絵師、歌川国芳の「相馬の古内裏」に描かれたことで知られるが、どくろを見ておびえている人を描いた“本家”をよそに、鈴木さんはどくろが反物を選んでいるユニークな設定で描いた。作品名もどくろの別名、しゃれこうべをもじって「洒落(しゃれ)こうべ」。