耳が聞こえない高校球児を追ったドキュメンタリー番組と映画の撮影が、パリで活動する日本人女性によって進められている。来月にはフランスでの撮影も実施。ハンディキャップを持ちながらも夢を追う姿を写した作品となり、完成後はフランスのテレビ番組などで放映される予定だ。
筆談で意思疎通
主人公は、東京都立大森高(大田区)の3年、玉田宙(ひろ)さん(17)。玉田さんは先天性の難聴で、1歳9カ月の時に両耳が聞こえないと診断された。
野球は小学1年から始め、小中学校時代は4番打者として活躍した。「聞こえないからこそ、誰よりも集中できたりと有利な面もある」と玉田さん。進学したかった都内の聾(ろう)学校の高等部には硬式野球部がなく「どうしても硬式がやりたい」と大森高に進んだ。
手話での会話はできる玉田さんだが、当初は部員とのコミュニケーションに苦しんだ。身ぶりやグラウンドの土を使った筆談を重ね、徐々にチームに溶け込んだ。球児としての最後の夏は正捕手としてグラウンドに立った。チームは4回戦で敗れたが、3回戦で適時三塁打を放つなどチームに貢献、守備の「司令塔」としての役割も果たした。