洗練された世界観
その半面、ファビオ・カドーレの新作は、非常にシンプルですがすがしい作品だ。08年に発表したデビュー作が、ブラジリアン・シティーポップスといいたくなるような洗練された世界観で話題に。2作目の「インスタンチ」も、その発展系といったイメージだった。
しかし、3作目となる「アクト・ウン」は、アルゼンチンの鬼才ピアニストであるエルナン・ハシントを迎えたデュオだ。これまでのソウルフルなアレンジを捨て、ほぼピアノと歌というシンプルで、ストイックな編成。少し緊張感をはらみながら研ぎ澄まされた世界観を演出している。とはいえ、持ち前のポップセンスは健在で、美しいメロディーとメロウなボーカルはここでも際立っている。スタイル自体は目新しいわけではないが、ここまで新鮮に感じさせるのは、彼の持ち味に他ならない。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)