焦った湯氏はマウントゴックスが入る渋谷区のビルまで急行したが、1階にいたビル管理会社の受付の女性が「会社には通せない。要件をメモに書いてください」と言うばかり。「BTCの引き出しが必要なんだ。大事な資金なんだ」と訴えてものれんに腕押し。その月末、マウントゴックスは破綻を公表した。「何があったか説明し、少しでもいいから、早くカネを返してほしい」。湯氏はそう訴える。
「理想の通貨」に投資集中
「BTCはインターネット以来の重要な発明だ」。利用者はそう声をそろえる。世界中の利用者が、マウントゴックスを通じて巨額の資金をBTCに交換して投資した。
米国のIT業界で長年働いてきた日本デジタルマネー協会代表理事の本間善実(よしみつ)氏(47)は13年11月、米国の雑誌のBTC特集を見てその可能性に着目。2カ月後にこの協会を発足させ、数百万円をBTCに投資した。「BTCはあらゆる商取引を変える可能性がある」。理想の通貨だと直感した。
その熱気を一身に集めたのが、マウントゴックスだった。13年3月期には手数料だけで1億円の売り上げがあった。顧客は12万人超。大半が、BTCの可能性に期待した海外の投資家だった。