【アートクルーズ】
明から清にかけて、中国の宮廷の女性たちはどんな暮らしをしていたのだろうか? 「中国宮廷の女性たち 麗しき日々への想い」(渋谷区立松濤美術館)で展示されている贅(ぜい)を尽くした衣装や陶磁器、装飾品約120点(北京芸術博物館所蔵)は、彼女たちのきらびやかな生活を彷彿(ほうふつ)とさせる。その中には清末に政治の実権を握り、“悪女”として歴史に名を残した西太后(慈禧太后、1835~1908年)に関わる遺品もあり、帝国の衰亡にも思いをはせることになる。
最高素材 手間惜しまず
「清代公主像」は、19世紀に皇帝の娘を描いた“肖像画”だが、誰がモデルかは分かっていない。色とりどりの刺繍(ししゅう)が施された女真(満州)族特有の冬の正装で、皇帝の一族しか許されない五爪の竜があしらわれている。
「紅紗地納紗綉百子図門簾」は、部屋の入り口に垂らす暖簾(のれん)のようなもの。合わせて100人の「唐子(からこ)」(中国の子供)が刺繍で描かれている。宮廷に納める工芸品は、官営工場で作られたが、最高の材料を使い、手間隙にも制限を設けない姿勢は、皇室の栄華をそのまま表している。