悲惨な状況でもユーモア
作中、不幸を重ねたスルリックはとある事故で片腕までを失ってしまうが、作品全体に流れるムードは、悲しみに終始する救いようのないものでは決してなく、スルリックが時折見せる愛らしい笑顔がさわやかに胸を打つ。「映画を見る人たちが絶望感だけを味わうものにはしたくありませんでした。かつて私が戦乱のボスニアで何とかドキュメンタリー映画を撮り終えたときに気づいたのは、どんなに悲惨な状況に置かれても、人間はユーモアを失わない-というものでした。笑いなしにこの世の中は存在し得ないでしょう。『ふたつの名前を持つ少年』は死の映画ではなく、命を考える映画なのです」。8月15日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)