70年談話の発表後、記者会見で発言する安倍晋三(しんぞう)首相=2015年8月14日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)【拡大】
政府高官は「安倍談話を批判する人は、ワイツゼッカー演説を批判するのと同じだ」と語る。安倍は謝罪の繰り返しにけりをつけることに関して、14日の記者会見でこう語った。
「これは今を生きる私たちの世代の責任だ。そういう思いを盛り込んだ」
談話のもう一つ新しい点は、村山談話などに全く見られなかった過去の日本が置かれた国際情勢の分析・言及だ。70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」が6日に提出した報告書を元にしたもので、例えばこう説いている。
「欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。日本は、孤立感を深め、(中略)行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました」
日本が「進むべき進路」を誤り、それが敗戦につながったことは直視しつつも、ある日突然、軍国主義の怪物国家となったかのような説明不足の過去の首相談話とは一線を画した。
中国や韓国が注目した「侵略」「植民地支配」「お詫(わ)びの気持ち」のいわゆるキーワードは対象を直接的に書かずに一般論として引用した。「全体として引き継ぐ」としてきた歴代首相の立場も「揺るぎない」と踏み込んだ。