秘伝を教室で
本来、秘伝だった和竿作りの技術だが、40年ほど前から教室を開いて教えている。いま5、6人の生徒が通ってくる。
大田区東雪谷の会社員、横田俊郎さん(59)も熱心な生徒の一人。すでに1年で、3本目の製作に入った。
いま作っているのは、カワハギ用の竿。繊細なカワハギのアタリ(食いつき)に対応しやすいように弾力性の高いホテイチクを使っている。仕上げの段階に入り、緑の色漆を塗って、リールを装着する部分を補強する作業に余念がない。
もちろん松本さんに教えを請うことも多いが、店の中に並んでいる商品を見ることで、自分の竿の製作のヒントにすることもしばしば。「やればやるほど、終わりがないと感じる」と、和竿作りの奥深さを知るようになってきた。
そんなところに、一人の男性が飛び込んできた。川崎市多摩区の青木明節さん(70)だ。「中通し」のハゼ竿の中に、釣り糸を通すときに使う針金が、引っかかってしまったという。