中国の新鋭、李睿●(=王へんに君、リー・ルイジュン)監督(32)が新作「僕たちの家に帰ろう」で描いたのは、時代の波にのみ込まれてしまった少数民族、ユグル(裕固)族の悲哀だ。主な舞台はかつて古代シルクロードの要衝として栄えた中国北西部、甘粛(かんしゅく)省張掖(ちょうえき)市。ラクダを連れて砂漠の旅へと出かけたユグル族の幼い兄弟が、普段はなかなか意識にのぼることもないユグル族としてのアイデンティティーをさまざまな形で突きつけられ、自分たちなりに生き方を模索する夏休みの壮大な冒険が描かれている。
かつてこの地にオアシス都市国家「甘州回鶻(ウイグル)王国」(9世紀末~11世紀前半)を築いたユグル族。資料を総合すると、当時の人口は30万人を数え、唐王朝を脅かすほどの勢いを誇ったとされるが、彼らの王国は、後に西夏を建国するチベット系タングート族の攻撃を受けて滅亡したという。その後、ユグル族は西夏→元→明→清…と、次々に歴代の大国の勢力下に入って急激に人口を減らし、現在は約1万4000人にすぎない少数民族に転落。その多くは甘粛省で静かに暮らしている。